憧れのアブ・アンバサダー。
やっと出会えたこのリールをどこかで使ってみたい。
近所で投げてみたら・・・、釣れてしまった。
これでよかったのだろうか。
ある秋の月曜日。
ふと時間が空いていた。
メンテが終わり、そのままほったらかしてあったアンバサダー1500Cと目が合ってしまった。ちょっと投げられるかどうか試してみよう。
ただオモリを投げるだけでもつまらない。
なにかないかと調べてみると、ルアーでハゼが釣れるらしい。ハゼクラ。しかしルアーが1000円以上もする。なんてこった。
以前、ある釣具店に立ち寄ったとき、廉価版が半額以下で一つだけ転がっていた。ピンクに黄色に赤に緑。志茂田景樹氏の衣装のようだ。草間彌生氏の作品というとちょっと違う。
どう見ても往年の志茂田景樹氏の衣装だ。いかにも釣れなさそう。売れ残る理由がわかる。
でもこれで十分。投げる練習なので。どうせ根がかってなくなるのだし。
川まで自転車で10分ほど。
平日の昼下がり。だーれもいない。大阪市内、都心からほど近いところだが見事にだーれもいない。
下手なキャストを見られなくてもいいのでありがたい。
ふわっと投げてみる。
ビビりながら投げてみるが、意外に大丈夫。
遠心ブレーキなしでも、メカニカルブレーキの調整だけしてやれば普通に投げられる。軽量スプールとPEラインのお陰かな。
なんだ、簡単。
小学生時代にダイワ・ファントムでサミングを鍛えただけのことはある。
流石に向かい風だと距離は出ないが、逆に追い風だとビューンと心地よく。
30分ほどしてもう十分。
帰ろうかとしていると、釣れちゃいました。
ハゼ。
ルアー食らいついたのだ。秋も深まり、20cm超えそうな、なかなかの大物。
釣れるのねえ、ハゼクラ。
慌てて写真を撮ったので、ボケボケ。
あら、考えてみればこれがアンバサダーの初釣果だ。
40年来、釣りキチ三平、開高健を読み、あの大物たちと渡り合う姿に憧れた、あのアンバサダー。
やっと手にしたアンバサダー。1500Cとはいえ、初めての魚が淀川のハゼになるとは!
しかも、そのルアーは忠さんのスプーンでもラパラでもない。ブレットンでもセルタでもない。ずんぐりとした志茂田景樹だったのだ。
これでよかったのだろうか。
憧れは憧れのままあるべきだったのではなかろうか。
でもこれは夢ではない。
頬をつねれば痛みのある現実なのだ。
いや、ハゼクラで頑張っている青年が「全く釣れない」と、エサでチビがぽつぽつとハゼを釣っている私たちの姿を恨めしそうに眺めていたこともある。
30分もしない間に、20cmのハゼ、これはこれで、なかなか大したものかもしれない。
しかも、アンバサダーで。その上、売れ残っていた志茂田景樹で。(志茂田景樹さんすみません、大意はありません)
複雑な気持ちで自転車に乗った。
相変わらず、釣りの神様はいたずらに微笑むのだった。
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