ある秋の暮れ。尾鷲に行った。
釣り糸を垂らすと・・・。
週末はなんやかんやの仕事のため、たまの土曜日の休日。
チビの子守を仰せつかっていた。
晩秋とはいえなんだか暖かそうだ。レンタカーでも借りてドライブでもと予約を入れておいた。
と、数日前にある知らせが。これも何かの縁と、チビを連れて向かうことにした。三重の南へ。滞在時間より移動時間の方が長いが、釣りに行けるとなるとチビも我慢するだろう。
その帰り道、夕方まで少しの間、約束通り少しだけ釣りをしてみた。
休みだというのに、尾鷲の港には大勢の釣り人が。
人気を避けるため、少し外れの漁港を目指す。
以前仕事で連れてきていただいたなあ、と思い出しつつ、車を走らせる。
そう、その時には海をのぞくと底の方には大きな魚が悠々と泳ぎ、熱帯魚のような黄色や青の小さな魚が透き通る海にきらめいていた。
山を越えた先にある、ひっそりとした港。数人のイカ釣りのアングラーのみだ。
その先には人気のない船着き場。
海をのぞくと、数メートルある海底が透き通って見えている。流石、やっぱり尾鷲だ。
ちいさな魚たちの群れも泳いでいる。
サビキの仕掛けをを垂らすとすぐに釣れた。
アジかイワシかとよく見ると、ボラの稚魚。
「これ食べられる?」
チビに尋ねられるが、
「うーん。」
としか言えない。
「持って帰る。」
というのでしぶしぶクーラーボックスへ。
アジがつれるといいなあ、いやサバでもイワシでもと思うが、やっぱりボラ。
でも釣れる釣りはやっぱり面白い。
尾鷲の純真な魚たちはどんなエサを入れても食いついてくる。
いや、エサがなくてもサビキの針にどんどん食らいついてきた。
美しい景色に、透き通った海。
まったくおかしな香りがしない、爽やかな潮風がぽかぽかとした海辺を通り過ぎていく。
「めっちゃ釣れるやん。」
これだけ楽しんでくれれば、ボラでもなんでもいいかもしれない。
チビの釣りの練習にのんびりと付き合った。
持って帰った、魚たち。グレ(スズメダイ?)、フグ(キタマクラ?)、ベラ(アカササノハベラ?)、ボラ。※フグは捨てましたよ。
一番釣れたのはボラ。写真以外にも三十匹程いただろうか。
どうしよう。捨てるのは忍びない。でもこんなの食べられるのか。
家に帰り、試しにボラを一匹捌いてみる。
小さいくせにすごい鱗だ。
恐る恐る、匂いを嗅いでみる。
全く臭くない。
というか、鱗も内臓もおかしなニオイが全くない。
また、恐る恐る三枚におろした身を醤油につけて口に運んでみる。
落語に『ふぐ鍋』という演目があるがそのものだ。
恐る恐る食べてみると・・・、
「うまい!」
とれたてというのはこういうことだろうか。さっぱりとした味のお刺身だ。
あとは心配することなく皆捌き、唐揚げに。
これもあっさりと骨まで美味しい唐揚げになった。
ボラは臭くて食べられない、というのが思い込みだと知った。あの辺りではおおきなボラを食べるらしい。
当然、山のようにうじゃうじゃいるボラの稚魚もこの通りの美味しさだった。
ごめんなさい、ボラちゃん。あなたに大きな偏見を持ってました。
美味しくないと言われる理由は海やエサのせい、つまりは人間のせいだったのね。
美しい海を思い返す。
いいところだなあ、尾鷲。
きれいな海と景色、また以前仕事で行ったあの海のことを思い出しつつ、ボラの刺身をいただいた。
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