北海道でトラウトを釣る。
これも子供の頃からの夢のひとつだった。
釣りをする、というだけのことなのだけど。いつかはと思っていたがなかなか長い道のりだったのだ。
我々世代で釣りが好きという人は大抵、子供の頃に『釣りキチ三平』を通ってきている。
色々な話、シーンはあれど、「イトウの原野」は特に印象深いと思う。
幻の魚という神秘性。ワクワクしながら三平を読んだ。
いつかは行ってみたい。外国にも、他の土地もそんなに興味はなかったが、北海道には行ってみたかった。
大学受験では北海道の大学も受けた。理由の一つはイトウ釣りができるかもしれない、ということだった。
見事に落ちて、夢は叶わなかった。
もしあそこで受かっていれば人生が変わっていただろう。
この世界に入り、何度か仕事で北海道に連れて行っていただいた。他の地方と比べ、自身のテンションが上がるような気がしていた。
全国を自分の落語会でまわり出した時にも、何とか北海道を組みたかった。これも叶ったのは最近のこと。
でも一歩づつ前には進んでいた。
当然はじめは釣りどころではないのだが、数回通う間には、千歳さけますの森・さけます情報館、千歳水族館を巡り、イトウやアメマス、ニジマス、オショロコマを見て興奮していた日もあった。(平日の水族館はお客様も少なく、ちょっとおかしな目で見られます。)
また別の機会には、ちょっとした下見気分で札幌から支笏湖をまわったこともある。
ただ、いたるところにこんな看板。
普通の道のわきである。ちょっと怖くて、二の足を踏んでいた。
何とかならないものか。
意を決して、釣り具屋に飛び込んだ。
少し話すと、店員の方も相当釣りの数をこなしてきているらしい。
思い切って聞いてみた。
私「大阪から来たんです。どこかでトラウト釣りたいんですけど」
店員「どこにでもいるよ。」
とばかにしたような答えが。内地の人はみんなこんな尋ね方をするのかもしれない。
私「どこにでも?」
店員「札幌の真ん中にある豊平川にもいるよ、なかなか釣れないけど。」
私「なんでもいいんですけど。」
店員「まあ、何を釣るかだね。(北海道は)広いから。」
私「熊っていますかね。」
店員「どこにでもいるよ。」
私「怖くて入れないですね」
店員「それ怖がってたら釣りになんか行けない。熊のいるところに入っていくんだから。」
私「ガイドさんとかどうですかね」
店員「いい加減な奴も多いから。まあ一つの選択肢かもね。」
なるほど。
世間話をして失礼ながら何も買わずに店を出たのだが、これはひとりではどうしようもなさそうだ。
だいぶんイトウに近づいたと思ったのだが。
何のつてもない北海道で落語会をするのもかなり大変だったのだが、なんの土地勘もない奴が、ヒグマの森に入っていけそうな気は毛頭しなかった。
もう少しのところまできているのになあ。
大阪と北海道、距離以上に遠いところだ。
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