小学校の春休み。帰省した田舎の鳥取の渓流でイワナとヤマメを釣った。
大人たちに「どうせ釣れないよ」と言われながら、弟と二人で黒い大人用の長靴を履き、のべ竿と蔵の裏の土を掘り返してやっとのことで見つけたミミズ、そして何匹魚を入れることができるだろうという大きなバケツをたずさえて、まだまだ寒い残雪の残る川へむかった。
雪を踏みしめポイントを探す。決めた場所は小さな堰堤下の淵。白泡の切れ目、大き目の石が沈んでいるだろうというのが見える。その横を流し切った時だった。僅かな時間の間に同じポイントで、どういうわけだが2匹のやさしい魚たちが掛かってくれた。二人して小躍りして喜んだ。
どうやってバケツに水を入れたのだろうか。重い重い水を一杯張ったバケツを自慢げに持ち帰ると、大人たちに「すごい、すごい」と言われ誇らしかったことを覚えている。
魚の名前すらわからない。釣りの本で写真だけは知っているがなんせ初めて見る渓魚である。片方はパーマークがあったのでヤマメだろうと推測できた。もう一匹はニジマスかなあと大人に見せると、イワナということがわかり、また大喜び。
幻の魚、イワナを釣った。しかも自分たちだけで。
自分たちが小さかったからだろうか。イワナもヤマメもとてつもなく大きい魚に見えた。
40年近い昔のことだが、釣れた場所、川の流れ、景色も鮮明に記憶にあるのが不思議である。
今はその堰堤も埋まってしまったが、今でも川の流れがどういうわけか好きなのです。
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