2018年12月11日火曜日

釣り回帰③ ~ビワマストローリング~

またも釣りの誘いをいただいた。琵琶湖でのビワマス・トローリング。トローリングとは憧れの響きである。ネタおろしの会の翌日、予定もたまたま空いている。こんな機会もちょっとないと、同行させていただいた。

それは春から夏に向かう日のことだった。

またもK氏の車で朝早く琵琶湖に向かう。私はビワマスという存在すらほぼ知らなかった。道中ににビワマスが琵琶湖の固有種で、とても美味であること、ガイドの方にトローリングで釣らせていただくことなどを聞いた。

全くイメージもつかめないまま、現場に到着すると、何となく不愛想なおじさんが今日のガイドの船長である。寝不足の私も向こうから見れば不愛想だったかもしれない。少し曇った天候がかえって日差しの強いこの時期にはありがたい。出船した琵琶湖の湖面はべた凪でもなく、強風でもなくといったところだ。

琵琶湖は沖へ出ると大きな波すらないが、ほとんど海の様相だ。そんな普段見ることのない景色にぼんやりしているうちに、トローリングは始まった。

アワビ貼りのようなスプーンをつけた数本の仕掛けをそれぞれ違う水深で流してくる。全く琵琶湖の真ん中あたりだがこのあたりに実績があるという。船長は相変わらず不愛想に、仕掛けを用意し、投げ入れ、あとはGPSと水温計、魚探を睨んでいる。

すべての仕掛けは船長が準備してくれる。こちらはただただビワマスが掛かるのをひたすら待つだけなのだ。釣りというより遊覧船に乗っているようなもんだ。K氏はまあ、のんびり待ちましょうというのだが、なんとも手持無沙汰である。船長に今日は釣れますかね、と聞いてみると、魚に聞いてくれという。大体釣れるが、釣れない日もある、と。なんともごもっともな答えである。

1時間半ほどだっただろうか、何の前触れもなく、竿がしなった。ビワマスである。40
cmほどの銀色の奇麗な魚体だ。船に何となく安堵の空気が漂う。もっと大きいのがいるからという言葉に期待が膨らむ。そして不愛想な船長の口元が緩み、口数が増えてきた。こうしてガイドをしていると、取りあえず一匹釣れるまでは心配なのだと、はっきり口にされた。正直な方である。

ぽつぽつとビワマスが釣れ出すと船長は饒舌にこちらの質問に答えてくれた。

これまでビワマスの生態は漁師もよく分かっておらずこの琵琶湖の深いところにたくさんいるであろうこと、そしてその釣り方を自身が開拓してしてきたことなどを伺った。

はじめはとにかくこの広い琵琶湖のどこかにいる、ということから始まったらしい。どこにいるのか何を食べているのかもわからない。エサになりそうなものは全部試したと言っていた。とにかく毎日湖に出て、ビワマスを狙っていたのだと。なんという執念だ。その甲斐あって今はこれで大体釣れるとわかってきた。そして釣れたビワマスを京都の料亭に卸しているそうだ。船長は漁師でもあったのだ。

それでもビワマスがなんだかわからないらしい。噂を聞きつけて自前のボートで流している人があり得ないところで爆釣したりすることも稀にあるらしい。それでも結局、結果を出すには毎日船を出して、実績と経験を重ねていくしかないのだと。釣りだけではない、様々なことに通ずる、重い一言だった。

船長とビワマスに敬意を表して釣ったビワマスは自分で捌くことにした。こんな大きな魚を一から捌くのは初めてである。包丁を購入し不細工ながら刺身、ムニエルに。どちらも旨かったが、刺身が最高。ビワマスは淡水だが寄生虫はいない。濃厚ながら後味はさっぱりとする独特の味と風味。それを船長の執念や思いと重ねつつ味わわせていただいた。



魚釣りの醍醐味と奥深さを感じる一日だった。こんなことが重なり、また釣りに足が向くのだ。







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